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cicada (Father's Birthday)

彼(dady)は病に臥せっていた
死に至る病
めがねを掛けた医者(doctor)が言う時間の問題ですね

ジカンノモンダイ?
それは試験問題のようなものだろうか
彼女(mammy)は苛立っていた
絶え間ない孤独感
帽子をかぶった老人(grandma)が言う人生はそんなもの

ソンナモノ?
それは極めつけに拙いものなんだろうか
彼女(mammy)は娘の身体を眺め
異様な身体の部分に罵りの言葉を吐き
それでも成長していく体に呪いを掛けた

言葉には棘もあったが
なによりも奥深く突き刺さった鏃に
娘はそれ以降成長することを止めた
娘はそれ以降オンナであることを止めた

自分を畸形だと信じた
そう信じて身体という檻に自分を閉じ込めて生きてきた
彼(dady)は危篤になって
娘の手を握り締めた
娘は一瞬手を引っ込めた
畸形がウツルといけないから

彼(dady)はひどく狼狽し
自分の娘の顔をはじめて見た
不器用に手を伸ばそうとして
凍り付いている娘を

そうしてひとつため息をついて
彼(dady)は静かに息を引き取った

まわりの人は一斉に泣いた
娘は当惑した
彼(dady)のチアノーゼが解けて
いまさらながら彼(dady)の手は暖かだった

むすめはじっと彼(dady)の顔を見て
そっと水を飲ませて
病室を出て行った

夜明けの空気がじわじわと立ち上ってくる夏の朝
蝉が庭の木で脱皮していた


※今日は父の誕生日だった。役所で今日の日付を入れてくださいって言われて
思い出した。死者にはもう誕生日はない。そう思った。
この詩は、父の亡くなった日を思って書いた詩だ。
なんだか、ほこりを払ってやりたくなったので、
ここに書いてみた。

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コメント

抗い難い濃密な詩ですね。

>たかぼさん
お久しぶりです。
もう父が亡くなって27年になるんですが、
ひょっこり思い出して
この詩をまた引っ張り出してきました。
もうこれも8年くらい前に書いたんです。
改めてこれを出してきて、へえーこんなこと書いてたんだと
自分のことなのに、ちょっと新鮮でした。

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